1 はじめに

“Python”言語などのプログラミング言語を使ってデータを分析したい、統計学を使ってデータの特徴を調べたい、と考えている方は多くいらっしゃると思います。

プログラミングと統計学を組み合わせると、データから意味のある特徴を効率的に引き出すことができます。データを視覚化して理解しやすくし、複雑なデータセットの処理や分析を効率的に行うには、プログラミングと統計学の組み合わせが重要です。

この記事では、プログラミングと統計学の組み合わせがどのようにデータの分析に役立つかについてご紹介します。

2 “Python”言語などのプログラミング言語と統計学の基本

最初にプログラミングや統計学とは何か、簡単に説明します。

プログラミングとは、コンピュータに対して特定の指示を与える技術であり、目的に応じてさまざまな言語を使用します。統計学やデータ分析のためには”Python”言語や”R”言語といったプログラミング言語が有名です。プログラミングを行うことで、データの処理、自動化、分析などが可能になります。

一方、統計学はデータを収集・整理・分析し、その結果から有意義な結論を導き出すための方法です。

2.1 プログラミングの役割

プログラミングは、大量のデータを迅速かつ効率的に処理する手段として不可欠です。例えば、データ分析を行う際には欠損値という「データの抜け」の処理など、分析前に様々な処理が必要です。また大量のデータに対して集計を行う場合もあります。

こういった作業は、手作業だと時間がかかり過ぎます。一方でプログラムを使えばあっという間に実行できます。また、複雑な計算や反復的な作業も自動化できるため、人為的なミスを減らすこともできます。

2.2 統計学の重要性

統計学ではデータの集め方、また得られたデータからその特徴を探っていきます。

考え方にもよりますが、統計学には以下の2つの方法があります。

  • 記述統計学:様々な表やグラフを描いたり統計量(平均値や中央値、分散など)と呼ばれる数値を計算、比較してデータの基本的な特徴を把握する。
  • 推測統計学:仮説検定や信頼区間などを使って、サンプルから母集団についての推論を行う。

少しだけ説明すると、記述統計学では手持ちのデータそのものを調べることが特徴です。一方の推測統計学では、もっているのはあくまでもサンプルと呼ばれる「調べたい対象の一部」です。調べたい対象全体は「母集団」と呼ばれます。

どのようにしてサンプルを手に入れ、そこからどうやって母集団について調べるかが、推測統計学の目的です。

適切な手法を用いることで、データからトレンドやパターンを見つけたり、予測モデルを構築したりすることができます。これにより、ビジネス戦略や研究課題への方向性や結論を得る、といったことも可能です。

2.3 プログラミングと統計学の組み合わせ

プログラミングと統計学を組み合わせることで、データから有益な情報を抽出する力が大きく向上します。この組み合わせによってどんな具体的な利点があるかについて詳しく見ていきましょう。

3 データ分析の効率化

プログラミング言語を使用することで、手作業では困難な大量のデータセットの分析が容易になります。例えば、“Python”言語には”pandas”というパッケージがあり、それを使って大量のデータの集計や処理を行うことができます。

他にも”Python”言語には、目的に応じた様々なグラフの作成を行えるパッケージもあり、複数のグラフを何度も一気に作成することもでき、非常に便利です。

データから有益な情報を得るためには、似たような処理を何度も行うことが良くありますが、プログラミングを使えばこういった処理も苦になりません。

4 可視化による理解促進

“Python”言語などでは、グラフや表など可視化のための機能が豊富です。データの可視化はどういった分析を行う場合でも重要です。最初にグラフを作成してデータの大まかな特徴を理解しておくことで、適切な統計手法の決定や、本格的に統計処理を行う際の前処理の方法について検討することができます。

プログラミングを使えば、複雑なグラフであってもコードを再利用して何度も生成できます。その結果、異なるデータセットに対してそういった複雑なグラフを作成したい場合も、気軽に何度も行えます。

5 統計的手法の実装

“Python”言語など統計学・データ分析用の機能を利用できるプログラミング言語では、様々な手法があらかじめ用意されています。これらの機能を使って、回帰分析や仮説検定など、様々な統計的手法を簡単に利用することができます。

実際に統計処理を行う際には「どういった手法が適切か」、「得られた結果をどのように解釈すればよいか」など、統計学・データ分析の理論面の理解も重要です。

とはいえ、簡単に必要な機能を呼び出し利用できることは、大きなメリットといえます。

6 処理の過程の可視化

プログラムコード自体はテキストファイルとして保存されます。単なるテキストファイルですので、チーム内で共有することも簡単です。

また行った処理がテキストとして順番に記述されているので、「どのような処理を行ったのか」、後から簡単に確認できます。プログラミング言語に慣れる必要はあるものの、後から処理を確認しやすい点は、情報の共有において大きなメリットといえます。

もちろん、ツールを使ってファイルの変更履歴を保存していき、以前どういった処理を行っていたのか確認できることも、テキストファイルの利点です。

研究活動などでデータを処理した一連の過程を、結果とともにレポートとして出力したい場合もあるかもしれません。出力専用のツールを使えば、プログラムコードを実行し、その過程を出力された画像とともに、きれいなレポートに仕上げることも容易です。

データ処理はこれ、文書の作成はこれ、などソフトウェアを切り替える手間がなく、グラフを更新した際にグラフを入れ替えたり、図表番号を更新する手間も省けます。

7 統計学の理解に役立つプログラミング

データを分析する際だけではなく、プログラミングは統計学自体を学習する上でも役に立ちます。

統計学には複雑な表現や難しい用語が出てきます。数学を勉強していけばこういった複雑な表現となる理由も理解できますが、必ずしも数学を勉強する時間はないかもしれません。

このような場合にプログラミングが役に立ちます。例えば統計学ではサンプリングという過程で、母集団からその集団を代表するサンプルを抽出します。このサンプリングの過程をプログラミングを使ってシミュレーションを行い、その結果を検証することで、統計学の概念の理解に役立てることができます。

実際にシミュレーションを行うことで、統計学の様々な概念を、実感を持って理解することができます。

8 まとめ

プログラミングと統計学は相互補完的な関係にあり、お互いにスキルの向上に役立ちます。どちらも学習して効果的にスキルを伸ばしていきましょう。