三角比では角度の単位として “度” (degree) (単位の表記: ^\circ) を用いましたが、三角関数ではラジアン (radian) (単位の表記: rad) を用います。“度”を使った角度の測り方を”度数法”、そしてラジアンを使った方法を”弧度法”と言います。この記事では、度数法から弧度法への移行をスムーズに行うための要点を解説します。

1 角度の単位 (度とラジアン)

1.1 度 (°) (degree)

45^\circ60^\circ といった角度の測り方に、皆さん慣れていると思います。円を1周すると 360^\circ になりますね。このように ^\circ を使って角度を表す方法を、度数法といいます。

1.2 ラジアン (rad) (radian):

一方、弧度法と呼ばれる角度の表し方ではラジアン (rad) という単位で角度を表します。ラジアンでは、弧の長さの円の半径に対する比で角度を表します。具体的には、円の半径を r、 点 A(r, 0) から、弧の長さが l となる点 B をとるとき、比 \frac{l}{r} で決まる値 \theta をラジアンで表した角度とします (Figure 1)。 つまり、Definition 1 で角度 \theta (ラジアン) を定めます。また、このように角度を定める方法を、弧度法と言います。

Figure 1: ラジアンの定義

Definition 1 (ラジアンを使った角度の定義) \theta = \frac{l}{r}.

ここで、 l は弧の長さ、 r は円の半径を表す。

たとえば、円周率の定義 (Note 1) から、c = 2 \pi r (c: 円周) が成立します。この時、 弧の長さ l = c を考えると、以下の式が成立します:

\begin{aligned} \theta &= \frac{l}{r}\\ &= \frac{c}{r}\\ &= \frac{2 \pi r}{r}\\ &= 2 \pi. \end{aligned}

つまり、円周に対する角度は 2 \pi ラジアンであることがわかります。度数法の場合、円周に対する角度は 360^\circ ですから、360^\circ2 \pi が対応することになります (Tip 1)。

Note 1: 円周率の定義

円周率とは、以下の式で定まる定数 \pi である:

\pi = \frac{c}{d}.

ここで、c は円周、 d は円の直径である。この値は円の半径によらず一定である。

2 度数法と弧度法の変換

この関係を使って、例えば 90^\circ を弧度法で表してみましょう。90^\circ360^\circ\frac{90}{360} = \frac{1}{4} ですから、この比を 2 \pi に掛ければ、弧度法で表した角度に変換できます。

2 \pi \times \frac{1}{4} = \frac{\pi}{2}.

よって、度数法における 90^\circ は、弧度法における \frac{\pi}{2} ということになります。

今度は、度数法における 60^\circ を弧度法で表してみましょう。60^\circ は、360^\circ\frac{60}{360} を掛けて得られます。同じように 2 \pi にも \frac{60}{360} を掛けて、2 \pi \times \frac{60}{360} = \frac{\pi}{3} となります。つまり、60^\circ\frac{\pi}{3} であることがわかります。

このように 360^\circ2 \pi が対応することを理解しておくと、度数法から弧度法へ、あるいはその逆も、簡単に変換することができます。この点を理解しておくと、一つ一つの角度について、度数法と弧度法における角度の大きさの対応を、覚える必要はない、という点に注意してください。

Tip 1: 度数法と弧度法の対応

360^\circ \Leftrightarrow 2 \pi

3 ラジアンは無次元量であることの確認

弧度法における角度の大きさはラジアンで表されますが、 Definition 1 からわかるように、ラジアンは長さを長さで割って定義されます (Note 2)。 つまり、ラジアンは無次元量 (単位なし) です。単位を持たないものの、便宜上ラジアン (rad) と呼んで、角度を表していることを主張しているわけですね。

Note 2: 単位の計算

単位同士を、“掛けたり”、“割ったり”することができます。例えば”距離 = 速度 \times 時間”ですが、この計算は単位に注目すると以下のようになります:

\begin{aligned} [m] &= [m/s] [s]\\ [m] &= \frac{[m]}{[s]} \times [s]\\ [m] &= [m]. \end{aligned}

右辺の単位が [m] になり、左辺と右辺の単位が確かに一致しています。このように、単位の計算を行うことができます。

4 まとめ

三角関数で角度を表す際に用いる弧度法について、度数法と比較しながら解説しました。度数法と弧度法の間の変換をスムーズに行えるように、練習を行ってみましょう。