2つの角を足すと 90^\circ になるとき、これらの角は互いに”余角”である、といいます。三角関数の公式には、余角に関する公式がいくつかあります:
\sin{\left(\frac{\pi}{2} - \theta \right)} = \cos{\theta} \tag{1}
\cos{\left(\frac{\pi}{2} - \theta \right)} = \sin{\theta} \tag{2}
\tan{\left(\frac{\pi}{2} - \theta \right)} = \frac{1}{\tan{\theta}} \tag{3}
これらの公式において、 \frac{\pi}{2} - \theta と \theta の和は \frac{\pi}{2} (90^\circ) ですので、これらの角は互いに余角です。上記の公式は余角に関して成立するので、“余角の公式”と呼ばれます。
この記事では、余角の公式を証明します。三角関数の定義を使って簡単に導出することができるので、公式を覚えておく必要はありません。むしろ、公式の導き方をしっかりと理解しておきましょう。
1 証明のための基本的な考え方
三角関数の定義 では、円を利用します。この円において、\frac{\pi}{2} - \theta 、そして \theta に対応する円上の2点が、どのような位置関係にあるかを見てみましょう。
Figure 1 では、角度 \theta に対応する点として、点 A(x, y) があります。\theta に対する余角は、 \frac{\pi}{2} - \theta であり、この角度に対応する点として、点 A' を考えます。点 A' が一旦 \frac{\pi}{2} 回転し、その後 \theta だけ戻ったと考えると、点 A' の位置が Figure 1 のようになることがわかります。
点 A' の座標についても考えてみましょう。点 A に対してオレンジの三角形を、点 A' に対して紫の三角形を考えると、これらは合同な三角形です。“斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい”ことに注意してください。したがって、点 A の座標が (x, y) であるとき、点 A' の座標は (y, x) となります。Figure 1 では 0 < \theta < \frac{\pi}{2} の時を図示していますが、他の状況においても点 A'(y, x) と書けることは変わりがありません。
あとはこの点 A、点 A' について三角関数の定義を適用し、比較するだけです。
2 \sin{\left(\frac{\pi}{2} - \theta \right)} = \cos{\theta} (Equation 1) の証明
点 A(x, y) において、三角関数の定義より、以下の式が成立します:
\cos \theta = \frac{x}{r}.
一方、点 A'(y, x) に対してサインを考えると、以下のようになります:
\sin{\left(\frac{\pi}{2} - \theta \right)} = \frac{x}{r}.
したがって、どちらも \frac{x}{r} となり、Equation 1 が成立します。
3 \cos{\left(\frac{\pi}{2} - \theta \right)} = \sin{\theta} (Equation 2) の証明
点 A(x, y) に対してサインを考えると、
\sin \theta = \frac{y}{r}.
点 A'(y, x) に対してコサインを考えると、
\cos{\left(\frac{\pi}{2} - \theta \right)} = \frac{y}{r}.
したがって、Equation 2 が成立します。
4 \tan{\left(\frac{\pi}{2} - \theta \right)} = \frac{1}{\tan{\theta}} (Equation 3) の証明
点 A(x, y) に対してタンジェントを考えると、
\tan \theta = \frac{y}{x}.
点 A'(y, x) に対してタンジェントを考えると、
\tan{\left(\frac{\pi}{2} - \theta \right)} = \frac{x}{y}.
これら2式では分母と分子が逆転しているので、
\frac{1}{\tan \theta} = \frac{1}{\frac{y}{x}} = \frac{x}{y}
が成立します。以上より、Equation 3 が成立します。
5 まとめ
三角関数における余角の公式を証明しました。これらの公式は Figure 1 を描けば簡単に導出できるので、覚えておく必要はありません。公式を丸暗記するよりも、むしろ本記事で解説した公式の導出方法を理解し、自分でスムーズに導けるようになることが重要です。公式をスムーズに導出できると、三角関数への理解がしっかりと深まります。繰り返し導出して、慣れておきましょう。



