足して 180^\circ (\pi) になる角は”補角”と呼ばれます。例えば \theta + (\pi - \theta) = \pi なので、 \theta と \pi - \theta は互いに補角であるといえます。以下のように、三角関数には補角に関連する公式があります:
\sin{(\pi - \theta)} = \sin{\theta} \tag{1}
\cos{(\pi - \theta)} = -\cos{\theta} \tag{2}
\tan{(\pi - \theta)} = -\tan{\theta} \tag{3}
この記事ではこれらの公式の使い方の基本を学びます。なぜ公式が成立するのか気になる方は、以下の記事をご覧ください:
1 公式の特徴
補角の公式を用いると、y = \sin x のような三角関数の x が鈍角を値として持つとき、この x を鋭角に変換することができます。例えば y = \sin 150^\circ は、補角の公式を使うと
y = \sin 150^\circ = \sin 30^\circ
となります。150^\circ は鈍角ですが、30^\circ は鋭角です。つまり上式において、y の値を 150^\circ という鈍角を使う代わりに 30^\circ という鋭角を使って求めることができます (なぜ上式が成り立つかは、後で解説します)。
このように、鈍角を使った三角関数の値を鋭角を使って表すことには以下のようなアドバンテージがあります:
- 角度を小さくできる。
- 式中で同じ値を見つけてまとめ、式を簡単にすることができる。
以降では補角の公式の使い方を練習し、そのアドバンテージについて考えてみましょう。
2 定理の練習問題
Exercise 1 \sin\frac{5 \pi}{6} を鋭角を使って表しましょう。
まず、 \frac{5 \pi}{6} は 150^\circ であり、鈍角です。\frac{5 \pi}{6} は弧度法で表した角度であり、150^\circ は度数法で表した角度です。よくわからないという方は、度数法と弧度法の解説 をご覧ください。
Step 1: \pi を作る
\sin\frac{5 \pi}{6} には鈍角が含まれていますので、補角の公式を使って簡単でできないか、検討してみます。補角の公式には \pi が含まれているので、まずは \pi を式中に作ります。
\frac{5 \pi}{6} = \pi - \frac{\pi}{6}
なので、
\sin \frac{5 \pi}{6} = \sin \left( \pi - \frac{\pi}{6} \right) \tag{4}
が成立します。
Step 2: Equation 1 を適用する
今回はサインが使われているので、 Equation 1 を使います:
\sin{(\pi - \theta)} = \sin{\theta}
この左辺にある \theta を \frac{\pi}{6} とみなせば、
\sin{\left(\pi - \frac{\pi}{6}\right)} = \sin{\frac{\pi}{6}}
が成立することがわかります。
したがって、Equation 4 より、
\begin{aligned} \sin \frac{5 \pi}{6} &= \sin \left( \pi - \frac{\pi}{6} \right)\\ &= \sin{\frac{\pi}{6}} \end{aligned}
となります。\frac{\pi}{6} は鋭角ですから、これで問題が解けました。度数法で表せば、以下のようにもいえます:
\sin 150^\circ = \sin 30^\circ.
このように、補角の公式を使って、150^\circ という大きな値で表された三角関数の値を、 30^\circ という小さな値を使って表すことができます。
Exercise 2 \cos \frac{6 \pi}{7} を鋭角を使って表しましょう。
Exercise 1 と同様にして進めていきます。
Step 1: \pi を作る
\frac{6 \pi}{7} は鈍角ですが、\frac{6 \pi}{7} = \pi - \frac{\pi}{7} に注意すると、鋭角を使って表すことができます。したがって、
\cos \frac{6 \pi}{7} = \cos \left(\pi - \frac{\pi}{7}\right).
Step 2: Equation 2 を適用する
\theta = \frac{\pi}{7} と考えると、 Equation 2 より、
\begin{aligned} \cos{(\pi - \theta)} &= \cos{\left( \pi - \frac{\pi}{7} \right)}\\ &= - \cos \frac{\pi}{7}. \end{aligned}
\frac{\pi}{7} は鋭角ですので、問題が解けました。
Exercise 3 \tan \frac{3 \pi}{5} を鋭角を使って表しましょう。
Exercise 1, Exercise 2 と同様に進めます。
Step 1: \pi を作る
\frac{3 \pi}{5} は鈍角なので、補角の定理を利用し、鋭角を使って表します。
\frac{3 \pi}{5} = \pi - \frac{2 \pi}{5}.
したがって、
\tan \frac{3 \pi}{5} = \tan \left( \pi - \frac{2 \pi}{5} \right).
Step 2: Equation 3 を適用する
Equation 3 と同様の形が作れたので、
\begin{aligned} \tan \frac{3 \pi}{5} &= \tan \left( \pi - \frac{2 \pi}{5} \right)\\ &= -\tan \frac{2 \pi}{5}. \end{aligned}
\frac{2 \pi}{5} は鋭角なので、問題が解けました。
Exercise 4 \sin 170^\circ - \sin 10^\circ を簡単にしましょう。
一見すると、どのように簡単にすればよいかわからないかもしれません。ただ、170^\circ は鈍角であり、10^\circ は鋭角です。私たちは補角の公式を使って鈍角の代わりに鋭角を用いることができます。したがって、ひとまず \sin 170^\circ を鋭角を使って表してみましょう。
\begin{aligned} \sin 170^\circ &= \sin (180^\circ - 10^\circ)\\ &= \sin 10^\circ. \qquad (\because \sin (\pi - \theta) = \sin \theta) \end{aligned}
この結果を元の式に代入すると、
\begin{aligned} \sin 170^\circ - \sin 10^\circ &= \sin 10^\circ - \sin 10^\circ\\ &= 0. \end{aligned}
以上のように簡単にすることができました。このように、鋭角と鈍角が入り混じった三角関数の式がある場合、鋭角だけを使うことで、式を簡単にできます。
3 定理の使用時の注意
Section 1 でお話しした通り、これらの公式により、大きな角度の代わりに小さな角度を使うことができます。実際、Section 2 では鈍角の代わりに鋭角を使って三角関数の値を表すことができました。
また Exercise 4 のように、鋭角で統一することにより、式中に同じ値を見つけ、式を簡単にすることができました。
これらの例が示すように、三角関数の問題で鈍角を見かけた場合は、補角の定理が使えるかどうか、検討してみるとよいでしょう。
また Equation 1 とは異なり、Equation 2, Equation 3 では右辺にマイナスの符号がある点にも注意が必要です。
4 まとめ
この記事では三角関数の補角の定理について解説しました。そもそも補角とは何か、そして補角の定理を使う状況の例と使い方について、復習してみましょう。









