三角関数は角度にのみ依存し、定義における円の半径に依存しません。円の半径に依存しないということは、角度 \frac{\pi}{3} に対しては半径 2 を使い、角度 \frac{\pi}{4} に対しては \sqrt{2} を使う、というように、三角関数の値を計算しやすい半径を、任意に設定することができます。
三角関数が円の半径に依存しないことは、三角関数の値の計算において任意の半径を考えることができることの、根拠となります。本記事では、この点について解説します。
1 三角関数の値は半径に依存しない
Figure 1 のように、大小2つの円を考えます。小さい方の円の半径は 1 です。角度 \theta に対応する点として、この円周上に点 A(x, y) をとります。次に、この円の半径を r (r > 0) 倍します。r は任意の正の実数をとります。この半径 r に対して円を描き、Figure 1 のように点 A' を考えます。
Figure 1 中にあるオレンジ色の2つの三角形は、\theta を固定したまま斜辺を r 倍しただけですので、相似です。したがって、点 A' の座標は、 (rx, ry) になります。
では、点 A(x, y), A'(rx, ry) それぞれにおいて、三角関数の値を定義を使って計算してみましょう。
A(x, y) を使った三角関数の計算
\begin{aligned} \sin \theta &= \frac{y}{1} = y\\ \cos \theta &= \frac{x}{1} = x\\ \tan \theta &= \frac{y}{x} \end{aligned} \tag{1}
A'(rx, ry) を使った三角関数の計算
\begin{aligned} \sin \theta &= \frac{ry}{r} = y\\ \cos \theta &= \frac{rx}{r} = x\\ \tan \theta &= \frac{ry}{rx} = \frac{y}{x} \end{aligned} \tag{2}
Equation 1 と Equation 2 を比較すると、確かに三角関数の値が一致していることが確認できます。このことは、三角関数の値は半径に関係なく、\theta が同じであれば、同じ値をとることを意味します。
2 まとめ
本記事では三角関数が、定義における円の半径に依存しないことを示しました。この事実は、定義を使って \frac{\pi}{3} など、代表的な値に対して三角関数を計算する際、任意の半径を使うことができる根拠になります。








