1 英語が使いこなせなかった

大学受験の頃、私は最難関レベルの大学の試験や模試でかなりの得点をとっていました。また大学へ入ってからも、自身の専門科目を英語を使って学習していました。それでも、大学院を修了した後でさえも、英語を聞き、話し、使いこなすことはできていませんでした。英語で文章は書けましたし、専門書や論文を英語で読むこともできましたが、話したり聞いたり、リアルタイムのコミュニケーションというのは私にはとても難しいものでした。

現在、私は英語ネイティブの方に英語で数学を教えることができるくらいに、英語が使えています。英語で数学のカリキュラムを調べ、リアルタイムに英語でコミュニケーションを行うことができます。まだまだ改善の余地はいくらでもありますが、ひとまず、数学の指導に特化しているとはいえ、英語を使いこなすことができるようになってきました。

2 “英語を学ぶ”から”英語で学ぶ”への転換

私が行ったことは、“英語を学ぶ”から”英語で学ぶ”への転換です。正直なところ、私は大学の途中くらいから”英語の勉強”はほとんどしていません。英語の資格試験の勉強も面倒でまともにやっていませんでした。代わりにやってきたことは、“英語で学ぶ”ことです。この方法の良い点は、他のことをしながら英語も学べること、そして通常の英語の学習ではまず知らない、専門的な英語の使い方を学ぶことができる点です。

2.1 PCの言語設定を英語へ変更した

といっても最初はたいしたことではありません。誰でもすぐに始めることができます。コツとしては普段の環境や自分が興味のあることに、英語を持ち込むだけです。一番簡単なことはPCやソフトウェアの言語設定を日本語から英語にすることです。普段使っているPCであれば使い方は慣れていると思います。表示言語が英語になっても、普段の感覚やアイコンなどから使い方はわかります。一方で表示言語が英語になっているので、普段の操作が英語でどう表現されるのか、知ることができます。

このように普段の環境に英語を持ち込むことで、その環境に関連する英語表現を増やすことができます。これに中学や高校で習った英語を組み合わせれば、PCやソフトウェアの使い方を説明できると思いませんか?私はPCやソフトウェアの言語をあえて英語にして作業を行っていました (ソフトウェアによっては日本語環境でないとうまく動かないものもあるかもしれませんので、一応注意書きです)。

2.2 趣味の情報を英語で集める

「ちょっと難しそう」と思った方は、ご自分の趣味に関連する情報を、英語で調べてみてはどうでしょうか?まったく知らないことであればいきなり英語で学ぶことはかなり大変ですが、趣味であればすでにある程度知識をもっています。この知識があれば、例えば趣味に関する動画を英語で見ても、ある程度内容を把握できると思います。これを繰り返していけば、趣味について知識を増やしながら自然と趣味に関する英語の知識や英語表現を増やしていくことができます。自分の好きなことですから、続けることもそれほど苦にはなりません。

私の場合は数学やデータの分析の方法を学びたかったので、海外の大学などが公開しているコースなどを使って英語で学んでいました。アウトプットも大事、と思っていたので、コースの動画を見た後、「もし講師の人に質問するなら」というシチュエーションを想定し、一人でPCの画面の前で質問していました。実際に質問しているわけではないので返事はないのですが、それでも習ったばかりの専門用語や、知ったばかりの表現を使って英語を話すことで、自然とそれらの英語が身についてきました。そしてある時、「何故だか英語が話せるようになってきた」と気づいたわけです。私の場合、英語が使えるようになったことは、別の勉強をしていた副産物だったわけです (ちょっとは英語が伸びることも期待はしていましたが)。

2.3 英語で学ぶことの特徴

「副産物」とは言いましたが、しかしこの方法、実は以下のようにかなり理にかなっているように思います:

  • 好きなことなので続けやすい
  • インプットが大量にできる
  • アウトプットもして実践的
  • 実用的な英語力がつく

そもそも趣味や、そうでなくとも普段の環境に英語を持ち込むことで、継続して英語に触れることになります。長期に渡って続けることで、「英語のシャワー」というべき大量のインプットを行うことができます。また誰かに説明するつもりや質問するつもりで英語を話すことで、アウトプットもできます。そして、そこで学んだ英語は実際に作業や学習、趣味に使われる英語ですので、単に英語の学習をしていたころよりも、ずっと実用的な英語が身につきます。

結局、英語が話せなかったり使いこなせないことの原因は、圧倒的にインプット不足だと思います。必要な単語や英語表現を知らずに英語を話すことは難しいです。自分の普段の環境に英語を持ち込むことで、自然と大量の英語をインプットできます。

3 英語で学ぶことの利点

これまでお話しした内容を踏まえ、英語で学ぶことの利点をまとめておきます。

3.1 快適さと自信の向上

定期的に英語を使って活動することで、話したり書いたりする際の不安感が軽減されます。続けることで、その活動が自然になっていきます。気軽にできることから始め、継続していきましょう。

3.2 興味を通じた学び

趣味など興味のある内容を扱うことで、その分野に関連した単語や表現を学ぶことができます。興味を通じた学びは、単なる暗記よりもずっと効果的です。興味のあることをもっと知りたい、という明確な目標があることで、自然と学習を続けることができます。

3.3 専門知識の増加

興味を持った分野についてよく知ることで、一般的ではない、その分野特有の専門用語やフレーズを身につけることができます。この知識は英語を仕事で使いたい場合などに、特に価値があるかもしれません。

3.4 英語を使った検索能力の向上

普段から英語を使った調べ物などの活動を行うことで、英語のサイトにも慣れてきます。わからないことがあっても英語を使った調べ物をスムーズに行うことができるようになるでしょう。分野にもよりますが、一般的に英語で書かれた情報は日本語のそれよりも大量に存在します。英語を使いこなすことで、多くの情報から答えを見つけることができるかもしれませんね。

4 英語で学ぶための活動

英語で学ぶための活動についてもいくつか例をまとめておきます。

4.1 趣味に関連する動画を見る

動画サイトには、料理、ゲーム、スポーツなど、様々な興味に関するコンテンツが豊富にあります。自分がすでに興味を持っているテーマについて英語の動画を見ることで、その分野についての英語表現を知ることができます。

4.2 興味のあることに関する書籍や記事を読む

もちろん動画以外にも、書籍や記事もよいかもしれません。動画と違って自分のペースで読める点はメリットかもしれません。また口語とは違った、文体や表現などもありますから、そういった知識を身に着けたい時にもお勧めです。ただ、最初は動画など音声のあるコンテンツの方が、発音がわかるので良いかもしれません。動画で幅広く学び、書籍でより深く学ぶという方法もお勧めです。

4.3 オンラインコースを受講する

オンラインのコースは動画よりも内容がまとめられているので、体系的に学習したい場合はお勧めです。私は数学やデータ分析、英語のコースなどを受講していましたが、園芸など趣味に関するコースもいろいろとあると思いますので、探してみてもよいかもしれません。

5 能動的な英語学習への転換

こうした学習は受け身的な学習とは異なり、自分の興味に基づいた能動的な学習です。受け身的に教わる場合とは異なり、最初は大変と感じることも多いと思います。ですが少しずつでも継続し、自分の生活に自然と英語を取り入れることで、これまでとは一段違った学習を行うことができます。最初から全部理解しようと思わなくてよいので、わかること、できることから徐々に始めてみてはいかがでしょうか?

6 まとめ

新しい学習へのカギは、テキストではなく毎日積極的に英語を使用することです。“英語を学ぶ”から”英語で学ぶ”へ移行することで、自然と自信をもち、楽しみながら英語を使いこなすことへつながります。ぜひ始めてみませんか?